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9月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「人数の町」
なかなか気持ちの悪いディストピアSFだった。様々な理由で社会からドロップアウトした人たちを集めて、ある一定のルールと役割を果たす限り自由に生活していい謎のコミュニティー。性別と外見、あと割り振られた“番号”以外に個人を特定するものは全てを失う。その代わり、衣食住全て揃い、しかもフリーセックス。入るのも自由。実は出るのも自由。ココで生きるために与えられる役割こそが映画のタイトルである。それがあまりにも淡々と描かれている。しかも、全体的に殺風景な所がディストピア感を醸し出して気持ちが悪いのだ。そして、この町の意味を知ったとき、ネットやTVニュースなどで話題になるような、ある種の事柄が違った目で見えるようになるよ……。

「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」
基本的にTV版の総集編なのだけど、コトブキ飛行隊と仲間たちVSイサオと自由博愛連合に話の焦点を絞っている。結果、TVアニメ版以上にイサオが悪人である。編集の仕方がだけで、結構印象が変わるね。コトブキ飛行隊結成前夜の新規エピソードは、キリエとエンマの出会いを描きホントに幼なじみだったんだなと再認識したり(キリエはエンマよりチカとの絡みが多いので)、レオナとザラのバディが増し、各キャラがいい感じにTVアニメ版の補完になってる。それより、コトブキの大迫力空戦シーンを劇場スクリーンで見られるというだけで充分価値のある映画だった。家のテレビ(あるいはPCのモニター)で見るのとは違い、「荒野のコトブキ飛行隊」の空戦シーンは、本当に劇場スクリーン映え、劇場音響映えする。最近YouTubeで配信されたTVアニメ版本編を全話見たというのならばオススメできるが、一見さんには……。

「ミッドウェイ」
海は全てを覚えている。また一つ、「艦隊これくしょん 艦これ」の提督たちが見るべき映画が出来てしまった。SBDドーントレスの凄腕パイロットでパールハーバーの復讐に燃えるベスト大尉。日本の軍事作戦を先読みするべく暗号解読に勤しむするレイトン少佐。海軍力に勝る日本軍(この頃日本海軍は実際強かった)に対して起死回生の一手を打つべく、地上では情報戦が繰り広げられる。そして、AL/MI作戦を察知した米海軍の反撃が始まるのだ。日本の空母機動部隊(赤城、加賀、蒼龍、飛龍ほか)に挑む空母エンタープライズと空母ホーネットの航空隊との空戦シーンは、先日観た「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」と一味違った迫力。ドーントレスによる急降下爆撃は、まるで一刀、必殺を狙う青い目のサムライのようだった。真珠湾、珊瑚海、アリューシャン、そしてミッドウェイ。軍事考証的なデタラメ(大概の戦争もの映画は避けて通れないが)は、多少あるもののミリタリーエンタメとして十分すぎる内容だ。ただし、一航戦および二航戦が好きな提督の皆さんは、相当な覚悟を持った方が良い。あと、南雲中将が微妙に無能扱いされるところとか(苦笑)。エンドクレジットで太平洋戦争に赴いた日米全ての将兵たちへの哀悼と戦争が如何なるものかを語りつつ、最後は、この言葉で締めくくられる。「海は全てを覚えている」

「TENET」の感想。時間を逆行させる技術は、世界を革新へ導くのか、それとも破滅へ導くのか。時間逆行サスペンスアクションだけに、主人公(名前がない)が動いている順行の時間軸と逆行してる過去の時間軸が物語上複雑に交錯する。アクションや物語は、思ってたより情報量が多く、でも話の展開は立ち止まらずテンポどんどん良く進むので、理解が追いつかない部分も。一度観ただけではなく、2度、3度見れば新たな発見があるかもしれない。特に空港内での航空機爆破&格闘シーンやカーチェイスシーンは、そこにある意味や意図をある程度判った上で、もう一度観ると面白さが増すと思う。パンフレットの解説や某ニュースサイトの「TENET」解説動画を見て後から判った。あとニール。主人公の相棒のニールに注目してほしい(大事なところだから2度言った)。「TENET」は、何度か見る度に面白さが判ってくる、いわゆるスルメ映画の部類だと思っていい。

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の感想。あれから数十年後、電波塔が建ち、言葉を伝える手段が手紙から電話に変わっても、伝えたい人、伝わった人の想いは変わらない。原作小説では明かされていたギルベルト少佐のその後を描くヴァイオレット・エヴァーガーデン最後の物語。原作とは物語の展開が大きく違う、アニメオリジナルの物語と知っていたけど、判っていても再会したあのシーンには心を揺さぶられる思いだった。尊い。本当に尊い。そうだね、ヴァイオレット……うん……そうだよね……。その間にあるヴァイオレットが受けた依頼。余命幾ばくもない少年ユリスが、家族と親友リュカに託した手紙のエピソードが、ギルベルト少佐が果たすべき事と重なるのもいい。そして、亡くなった祖母が残した50通の手紙を孫娘が発見し、託した想いを辿っていく旅路の果てに彼女は何を見るのか。ヴァイオレット・エヴァーガーデンの物語は終わっても、彼女を紡いだ物語は、これからも語り継がれていく……。

「映像研には手を出すな!」の感想。予想外にと言ったら失礼だけど、期待を裏切らなかったTVドラマ版の本気度が劇場版で結実。浅草氏の最強の世界が実写映像化される。CG化されたロボ研と浅草氏の巨大ロボ・タロースは、もうそれだけで作品を作って欲しいレベルの完成度でバリバリ動く。水崎師のロボアニメーションは実写でも(少しだけ)描かれる。名プロデューサー金森氏が抜群のマネジメント能力を発揮する。百目鬼氏の音響へのこだわりもいい。原作のイメージを損なわず(特に実写の金森氏は完成度が高い)、近年のマンガ実写化では、とても成功していると思う。
それ故に不満が点がある。金森氏に(結果的に)妥協させるシーンを入れてしまったことだ。映像研とロボ研が生徒会による部の統廃合を免れるため共同でロボットアニメを作る計画をたてる。映画では、最初この作品発表の場を同人誌即売会「コメットA」に設定していた。これは原作、アニメだともう少し先のエピソードになるので、映画オリジナルだけどスケール上げてきたな、と期待していた。そこに教師と生徒会が、映像研を呼びつけ、「部活動で金儲けをするとはけしからん」といちゃもんをつけられる。当然、原作やアニメを多少なりとも知ってるなら、金森氏が教師と生徒会を言いくるめて突っぱねるところ想像するだろう。でも、そうじゃなかった。学校外活動を部の実績と認められず、文化祭への出展へと舵を切り直せねばならなくなった。ここは本来なら金森氏がかっこよく言いくるめるシーンになるはずが、そうならずカットに。これは、本当にもったいなく残念な部分だった。
あと、アニメ版で金森氏がラーメン食べるときに長い髪をアップにまとめるフェチ度の高いシーンも実写にならなかったのも残念だった。あとあと、せっかく「ロボ対カメ」完成したアニメーションは全部見たかった。それ以外は、世にも幸せな実写映画化だった。なんだか、珍しく不満ばかり感想で書いているけど、実写版「映像研には手を出すな!」の持ってるポテンシャルの高さを見ると、もっとやれただろうと逆に期待をしてしまうのだ。

8月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「ジョーンの秘密」
この映画を8月のこの時期に公開したことには、実は大きな意味がある。2000年5月、老婆のジョーンは、英国保安局MI5にソ連へのスパイの容疑をかけられ拘束された。男女2人の取調官を前に彼女は過去を語り出す。1940年代のイギリス。ジョーンは、ある思いから核兵器をあえて敵に持たせることが戦争の抑止力になると考え始めていた。ジョーンがそう信じるに至り、共産圏のスパイ行為に加担したのは何故なのか。学生時代に愛する人が共産主義者だったから?それもあるかもしれない。だが、ココで日本の太平洋戦争が関わってくる。ジョーンが研究協力していた原子爆弾の威力を知ってしまったから。ジョーンの回想とスパイ容疑をかけられた現在のやりとりが交互に物語られ、彼女が確固たる信念で核戦争を起こさないために行ったことは正しかったのか。結果的には、日本の広島と長崎に原子爆弾が投下されて以降、少なくとも核戦争と呼ばれる状態になっていない。国家を裏切ることになっても、この点においてジョーンの行いは正しかったと言えるだろう。それでも罪は罪なのだが、彼女なりに悔いのない人生だったのではなかろうか。

「ブックスマート」
私の数年間の(真面目に勉強した)学校生活は、努力は何だったのだ?などという人生の後悔を吹き飛ばすべく、モリーとエイミーのが企てた卒業パーティー潜入計画は、本当にハチャメチャで爆笑の連続だった。様々なパーティーを奇しくもハシゴして、高校生活ほとんど遊ばなかった分を、まるでこの夜だけに凝縮。モリーとエイミーのはっちゃけっぷりが面白い。その一方で、モリーは、それまで積極的に関わっていかなかったクラスメイトの意外な一面を知る。世の中には、自分の努力の積み重ねを軽く上回る“上手くやれる”人間がいる。一言で言うと、非常に要領のいい人間。絶望しかけたモリーがエイミーと共に自棄っぱちのように遊びまくるのだが、同時に自分の本当の気持ちと向き合う。特にエイミーの恋模様は、一部の人にとって胸をときめかせるね。

「きっと、またあえる」
インドの名門ボンベイ工科大学に入学したエリートの卵……の最底辺たちによるボンクラ大学ライフ。まさか、これが感動ドラマになっていくなんて想像できただろうか。インドにおける大学受験戦争の厳しさは、日本と比べものにならない。インドの名門大学、一流大学は、合格率わずか1%。目指し日々猛勉強し、極めて狭き門に向かって人生をかけた試験に臨んでも、99%は路頭に迷うのだ。主人公アニの息子ラーガヴが受験失敗のショックで飛び降り自殺を図ってしまい、一命を取り留めるも脳挫傷により予断を許さない状態に。その彼の命を繋いだのが、アニの語る大学時代のスポーツ大会ゼネラル・チャンピオンシップにおける奇跡だった。これを切っ掛けにかつての仲間たちがアニの下へ集まり、それぞれがゼネラル・チャンピオンシップの苦闘の思い出を語り始める。ただの“負け犬たちのワンスアゲイン映画”ではない。非常に痛快だが、この邦題「きっと、またあえる」にあるように、これはかけがえのない友と命を繋ぐ物語なのだ。

「オフィシャル・シークレット」
自分の信じた正義で世界は変わるのか。イラクと戦争するために手段を選ばぬ米国のやり方に憤りを覚える英政府通信本部(GCHQ)の女性キャサリン。彼女は見た1通のメール、米国が国連の主要メンバーに対して盗聴を行うことを新聞社にリークする。だが、その勇気も虚しく、イラクには大量破壊兵器がある、という理由で押し切ったアメリカはイラクとの開戦に強引な手で踏み切ったワケだけど、実は証拠(エビデンス)がなく、果たして見つかっていない。そして、キャサリンは、情報漏洩したことを告白し、公共秘密法違反の容疑で逮捕され、愛する夫の運命すらも変えてしまう。機密情報漏洩と間接的に戦争を正当性と問う裁判に発展するポリティカル・サスペンスで面白い。

「2分の1の魔法」
予告編等で見ていた物語の印象と大分違った展開に良い意味で裏切られた。自分に自信が持てないイアンと自信だけはある魔法歴史オタクでボンクラな兄バーリー。この2人は、幼い頃に父を病で亡くしていた。イアンは、16歳の誕生日に父の形見として貰った魔法の杖で父親を復活させる魔法を試みるも失敗。そこから復活の魔法に必要な不死鳥の石を探す冒険が始まる。イアンは、ボンクラな兄を家出厄介な存在を思っていたが、父が復活したらやりたいことリストを見て改めて考える。自分がどれだけ兄に大切にされていたかを。そして、その兄バーリーは、父親が亡くなる寸前にやり残したことあった。兄弟の尊い絆の物語であり、出来ないという思い込みを可能にする勇気こそが魔法ということを教えてくれる。あと、この日本版エンディングテーマにスキマスイッチの「全力少年」を選んだ人は、マジ今回MVPものだと思う

7月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「イップ・マン 完結」の感想。人種の対立。太極拳VS詠春拳。史上最強の空手VS詠春拳。原点に返った様な戦いでありながら、イップ師父の意志は、如何に弟子たちに“継承”されたか。この戦いは、イップ師父の人生の集大成を見ているようで胸が熱くなる。イップ・マンという武闘家の伝説の終わり見届けよ。米軍基地の訓練シーンで、厳しい言葉でシゴく教官の相手がハートマン軍曹なのが「フルメタル・ジャケット」のパロディめいてちょっと笑った。

「一度も撃ってません」の感想。落ち目のハードボイルド作家の裏稼業……という体の緻密な取材活動(取材相手は本物のヒットマン)が招いた不倫疑惑。石橋蓮司さんの渋さと哀愁が伝わるフィルムで、殺し屋じゃないけど殺し屋と思われがちな、ハードボイルドを気取る雰囲気が実にいい。そして、主人公市川進が行きつけのバーのマスターが新崎人生というだけで、もう面白い。これはズルい(苦笑

「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」の感想。都合良くいかない人生でも、それなりに素敵な奇跡くらい起こる。ニューヨークで映画監督のポラードに取材をしたいアシュレーと地元ニューヨークで彼女とデートしたいギャツビー。この2人の思惑が、思わぬところですれ違う。どちらかといえば、アシュレーの都合に振り回されていくギャツビーだけど、時間つぶしに地元のニューヨークをブラブラして旧友や兄との再会、短編映画の手伝いで一緒だった女性、出会いが重なることで、新たな人生の一歩へ繋がっていく。一方でアシュレーは、ポラードへの取材が上手くいかず、あげく自分の新作映画が気に入らず逃亡するポラードに振り回され、売れっ子俳優のヴェガに誘われマスコミにスキャンダルをすっぱ抜かれ、ヴェガの家に“今カノ”が帰って来てしまい下着にコートで裏口から雨の中逃亡、と踏んだり蹴ったり。男女2つの視点で描かれるラブコメディだと、男性側が損な役回りで描かれることが多いのだけど、「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」ではそれが正反対。ギャツビーとアシュレーのどちらに感情移入するかによるけど、物語としてはやるせないに気持ちなるかもしれない。

「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」の感想。チャンスは待つのではなく自分から掴みにいくもの、とよく言うけど、幸せもそうなのかもしれない。掃除、洗濯、料理、買い物、毎日規則正しいルーティーンで夫との快適な生活を維持してきたマリーは、夫の不倫現場を目撃することで我慢の限界の達する。でも、そこにあるのは怒りではない。悲しさだ。愛する夫との40年とは何だったのか。そんな自分の満たされなさを埋めてくれたのが、ボリという控えめに言ってド田舎のユースワーカーをやることだった。サッカーど素人のマリーが、コーチとして子供たちの信頼を得て、町の人たちとも交流を深めていく。ここでの“第二の人生”は、今の自分を作るに至った幼い頃の辛い出来事、その後のある種の呪いと言ってことことからようやく解放され、生きる喜びに満ちているようだった。自分らしい生き方を見つけるまで長かったね。「ブリット=マリーはここにいた」この言葉と共に、マリーは、ちゃんと第二の人生を歩み出せたんだと思ったら、この映画の感動がより胸にグッとくるものになった。日頃、家事を貰うのが当たり前に思っているのなら、今日この日はパートナーに感謝の言葉を。

「悪人伝」の感想。これは、ある意味で私が本当に見たかった「アウトレイジ」かもしれない。連続殺人事件を追うチョン刑事とその犯人に襲われたヤクザの幹部ドンス。ドンスは報復を。チョンは逮捕を。目的の違う2人が同じ犯人を求めて共闘する。だが、お互い手段は選ばない。そこにヤクザ同士の抗争が微妙に絡んでくる。暴力(バイオレンス)と情報戦(インテリジェンス)で犯人を追い詰めるヒリヒリ感。韓国ノワールの面白さを余さずぶち込んだ快作だった。そして、絶対に敵に回してはいけない男を怒らせた末路は……。

「17歳のウィーン」の感想。愛と性と閉塞していく社会の狭間で少年は大人へ成長していく。母親の恋人が事故死したことで、ウィーンまで出稼ぎしなければならなくなった息子のフランツは、受け入れ先のタバコ屋店主で面倒見のいいオットー、片思いの女性アネシュカ、そして良き相談相手ジークムント・フロイト教授と出会い、人生を学んで大人の階段を上っていくが、ナチスの支配が色濃くなっていく中で、これから自分はどう生きるかの選択を迫られる。フランツの女性に初な思春期の静かなるパッションには、見ていてこそばゆさを覚えつつも、ナチス政権下で自由や大切なものが奪われていく切なさと憤りが見えてくる。好きな人、大切な人のために何ができるか。何をしたらいいのか。悩めるフランツに生きる道を指し示してくれたのがフロイド教授であり、彼との友情があったからこそ、信じる道へ進んだラストシーンに胸を打つ。

4月および6月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「囚われた国家」の感想。
エイリアンに支配された後の地球が舞台という割と新しい発想のディストピア映画。主な国の政府は、エイリアンに対して降伏している。人類側の警察は、エイリアン統治下でレジスタンス狩りをしている。そして人類は、インプラントによって行動を24時間監視されている。この状況下でレジスタンスの反抗作戦が水面下で計画され、警察との情報戦が繰り広げられるサスペンス要素もあって面白い。つまり、コレ、同じ人間のレジスタンスと警察の攻防は描かれても、エイリアン自体と直接戦うシーンは、ほとんどないのだ。滅多に姿を現さないが、人類にとって恐怖の存在。むろん低予算という都合もあるけど、それでいて風景の端々からエイリアンに支配されていること思わせる画作りになっている。

「ハリエット」の感想。黒人を奴隷として、人ではなく財産の一部として扱うのが当たり前だったかつてのアメリカ。白人奴隷主から逃げ出すことに成功したハリエットは、黒人奴隷を逃亡させる組織の一員となり、その後も奴隷解放に戦い続ける。ハリエットの過酷な逃亡劇は、どんなことをしても自由を勝ち取らねばならないのだという強い執念をがあってこそだ。それを感じるからこそ、ハリエットをリーダーとして付いていく。ただ、ハリエットが数多くの黒人奴隷を逃がすことができた理由の一つに、過去に奴隷監督から受けた暴行の後遺症によるナルコレプシーの“居眠り”の際にある種の予知夢またはニュータイプの勘めいたものが見える(彼女は神のお告げと呼んでいる)というのは、さすがにファンタジー過ぎではと思ったけど。今現在でも黒人への人種差別問題は後を絶たず、欧米を中心に黒人の人権を訴えるデモが繰り広げられている。「ハリエット」は、この問題の根深さの一端を知る切っ掛けにはなるだろう。

「デッド・ドント・ダイ」の感想。ど田舎で突如巻き起こるゾンビ騒動に奮闘する地元警察官を描いたコメディ。だが、街へ出れば大体の人が顔見知りという田舎が少しずつ非日常に侵食されていく様は、恐怖と共に救えない、救えなかった悲しさを感じさせる。いわゆるゾンビ映画と呼ぶには情緒的。所々あるアダム・ドライバー演じるロニーのメタ的なセリフやゾンビを刀で一刀のもとクリティカルヒットさせる謎の金髪移住者ゼルダが、ここで起きていることは本当に現実なのかと疑ってしまうおかしさがある。そして、ゼルダの正体には、思わず笑うしかなかった。


「ストーリー・オブ・マイライフ」の感想。自立した女性にとっての人生の幸せとは何か。ジョーは駆け出し作家として上京。メグは、愛する男性と結婚。エイミーは、画家の勉強にフランスへ。ベスは、病を煩うも家族のために尽くす。これが私の生きる道と思っていたことでも、未来はそうそう思い通りにいかないし、大体苦難の連続である。かつてのジョーも、メグも、エイミーも、ベスも、それぞれの未来に希望を持っていた。それは、明るくライティングされた画の過去に対して、薄暗い画の現在に現れている。大切な人のために何ができるだろう。残された者は何ができるだろう。そう考えた時にジョーの選んだ生きる道の清々しさ。現在と過去を交錯させながら、選んだ未来を描き出すストーリーに胸が熱くなる。これは、本当に“私の人生の物語”だ。

「エジソンズ・ゲーム」の感想。小学生の頃に読んだ伝記まんがが教えてくれないトーマス・アルバ・エジソンの栄光と挫折。その中でもジョージ・ウェスティングハウスの電力会社ウェスティングハウスとの電力シェア争い、電流戦争(War of Currents)をテーマに描いた本作は、この戦いにおけるエジソンの姑息で戦いっぷりが描かれる。ウェスティングハウスとニコラ・テスラの交流送電の方が運用面で優位なのが判っているので、エジソンはウェスティングハウスに対してネガティブキャンペーンで対抗するしかなく、それがまた惨めさを浮き彫りにする。正直、ただひたすらエジソンの凋落を見る映画と言えなくもない。その後エジソンは、映画事業において(やはり強引なやり方で)そこそこの成功を収めるが、ビジネスの世界に“敗者の美学”は存在しないことを痛感させられた。

「ソニック・ザ・ムービー」の感想。冒頭、セガのクレジットが出てくるときの音が、何となく、「セーガー」の聞こえるような気がした時点で私の掴みはOK。少なくとも“高い授業料”を払って実写CGソニックのデザインを作り直した意味はあったし、その上で「ニックのアクションの良さを十分引き出した、ファンの見たかった「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」であり、いい実写映画化だった。実は孤独なヒーローのソニックと田舎の保安官トムの友情。バディムービーとしてもいい。何よりDr.エッグマンのジム・キャリーが、暑苦しいくらい“ジム・キャリー節”を見せるので、彼の魅力を再認識すること間違いない。ソニック役の吹き替えが中川大志さんに変わってしまったことで失望しているファンも多いだろう。でも、一つだけオリジナルに準拠しているキャスティングがある。続編も決定しており、ゲームファンへのサプライズと言える素敵なエンドクレジットの後をお楽しみに。

3月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「仮面病棟」の感想。
知念実希人先生の原作小説とは少し違う筋の通った結末で、正直、原作に欠けてた部分が上手く補完されたいい映画化だった。知念先生が脚本に携わり、映画ならではのトリックにこだわったというだけあって、ハッキリ言って謎解き部分における物語の流れがすごく丁寧。特に速水、宮田、愛美の部分の改変は、犯行が田所病院でなければならない理由について、(結末のネタバレになるので具体的に言えないけど)原作よりも納得しやすいと思う。

「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」の感想。
良くも悪くもジョンの人生を狂わせてしまったからこそ、彼について語るルパートの言葉は切ない。人気俳優でありながらゲイで家庭に問題を抱えたジョン・F・ドノヴァン。子役であったが家庭の事情で英国へ移住し転校先でいじめられるルパート・ターナー。この2人の遠距離文通は、互いに欠けた心を埋め合わせていく。ジョンの母親は控えめに言って“毒親”。なのにジョンは、彼女を見捨てることが何故かできない。またジョンはゲイで男娼の愛人がいる。表にできない様々な悩みや秘密を抱えながらも、遠くイギリスのルパートと文通することが、ジョンの心をどう満たしていったか。そして、ジョンとルパートの長年の交流がスキャンダルとして明るみに出てしまい、ジョンのある行為がルパートを絶望のどん底に叩き落とすのだが、この後のルパートの慟哭が、どれほど彼にとってジョンが心の支えだったかを物語る。

「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」の感想。
私を縛るクズ男を全部ぶっ殺して私の旗の下に私は自由に生きるんだ!という強い意志とパッションを感じる、ハーレイ・クインの生き様が集約されたよいフィルムだった。スタイリッシュでオシャレなアクション、警察署襲撃で警官をしばき上げる演出に至るまで、これがハーレイ・クインという存在感を叩きつけてくる。最高にクールだし、「ワンダーウーマン」とは全く違うベクトルで女性の逞しさ、したたかさ表現していて清々しい。

「サーホー」の感想。
思いつく限りのエンタメアクションをぶち込んだ快作。「ワイルド・スピード」「ミッション:インポッシブル」「マッドマックス」混ぜりゃいいってもんじゃないだろ、と思わなくもないが、そういったオマージュ(?)の上でプラバースのスタイリッシュなアクションこそが見どころなのだからしょうがない。ロイ・グループの資産3兆円の行方。謎のエージェント、アショークは何者なのか?コンゲーム的要素もあるので、最後の最後まで気が抜けない。そして、新たなる王を称えよ。
プロフィール

藤堂志摩子

Author:藤堂志摩子
初めまして。私は、仮想世界の女子校に通う“エターナルセブンティーン”藤堂志摩子といいます。乃梨子の「阪神タイガースを生暖かい目で見守る志摩子さまが好きだ!」という微妙なリクエストで生まれた新しい形のバーチャルネット白薔薇さまです。どうかよろしくお願いします。
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