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1月に観に行った映画感想まとめ【2021】

「新 感染半島 ファイナル・ステージ」の感想。
ゾンビ化ウイルスによって完全に棄てられた国家となってしまった韓国の荒廃っぷりや音と光に反応するゾンビとの戦い方が、ポスト・アポカリプスゾンビ映画として出色の出来だと思う。助けられるはずだった人を見捨てて逃げた男ジョンソクの無念が、一つの家族を救う展開になっていくのもいい。恐らく「マッドマックス」の影響を受けたと思われる終盤のカーチェイスやジョンソクを助けた少女ジュニのドライブテクニックは、コレがゾンビ映画であることを一瞬忘れさせるほどで、かなり見どころ。「新 感染 ファイナル・エクスプレス」から予算倍増でゾンビアクションてんこ盛りなのに、感動できるドラマをきちんと押さえているのは、他のゾンビ映画と一線画している。

「この世界に残されて」の感想。
第二次世界大戦後のハンガリー。ホロコーストを生き残った者たちの受けた心の傷は深く、そう簡単に癒えるものではない。だからこそクララとアルドは、お互い失ってしまったものを埋め合わせることで愛に気づく。ある意味で癒し愛である。クララとアルドの関係は、擬似親子のようであり、恋愛に近い感情もあったかもしれない。親子ほどの年の差恋愛を感じさせるも、背徳感より心で求め合うほのか情景が美しい。冒頭で世界に絶望したかのような表情の孤独なクララが、アルドとの出会いによって少しずつ外と関わりを持つようになり、最後には恋人のぺぺと明るく過ごしているのを見て、アルドに少し感情移入したせいか寂しさを覚えずにいられなかった。

「ミッション・マンガル」の感想。
インドの惑星探査機が、アジアで初めて火星周回軌道に到達したマーズ・オービター・ミッション。コレを元にしたサクセスストーリーで、超低予算によるあらゆる困難をポジティブに解決するのが、如何にもインド映画らしくて楽しい。ミッションのメインスタッフは、何故か女性が多くて、しかも皆パワフル。この辺りは、映画「ドリーム」を彷彿とさせるし、ある種の時代性(そうではないことは、途中で薄々察する)を感じるが、チャレンジせずに夢を諦めることはしない強さの大切さを教えてくれる。もちろん、お約束のダンスシーンもある。でも、このダンスシーンがあるおかげで、NASAから来た男のストレスがスッキリするし、毎度のことながら、何の違和感もなくダンスをぶち込んでくるのは、もはや職人芸の粋。

「キング・オブ・シーヴズ」の感想。
元裏社会の大泥棒だったおじいちゃんたちの人生逆転劇……と思いきや中々思い通りには行かず、拗れていく仲間たち、大金を手にする最後の勝利者は何者か?高齢で大金庫を襲うことの色々な悲喜交交がユーモアも交えて描かれ、別な意味でハラハラする面白さだった。ハットンガーデンの大金庫を狙う際は、昔取った杵柄から非常に計画的で、少々のトラブルがあっても臨機応変に対応する。大金庫から金と宝石をいただき、逃げるまで非常にスムース実行できたが、現代の監視カメラ技術と警察の捜査力はバカに出来ないワケで……。コレが過去に何度か映像化されてる実話だというのだから驚く。そして、映画の通り、実行犯は1人捕まっていないということも……。

「KCIA 南山の部長たち」の感想。
コレは、少なくとも私が見たことないイ・ビョンホンだった。かつてパク大統領と共に革命の戦士だった中央情報部のキム。大統領の腐敗が暴露され、信じていたものに裏切られ、凶行へ及ぶに至った苦悩を演じるイ・ビョンホンの味わい深さと言ったら……。ここ数年、韓国の戦後(朝鮮戦争後)史の暗部を題材にした映画が何本かあって、軍事独裁政権への反発から民主化を望む市民によるデモや武力闘争が多発していたことは何となく知っていた。そういった点でも興味深く見たし、その状況を匂わすシーンがあり、この映画を見た人は、ぜひ「タクシー運転手」という映画も見て欲しい。ちなみに、この作品でパク・チョンヒ大統領が暗殺された1年後の物語である。

「どん底作家の人生に幸あれ!」の感想。
人生は物語だ。チャールズ・ディケンズの「デイヴィッド・コパフィールド」を原作に波瀾万丈なデイヴィッドの人生を非常にユーモラスに描いていて、憂鬱なご時世を笑って吹き飛ばせそうな映画だった。クセの強い登場人物たちは、みな魅力的で、デイヴィッドの人生を彩っていく。そして、それら全てが一つに繋がる。ラストは、人生賛歌、人間賛歌を見ているようで清々しい。

「プラットフォーム」の感想。
よく、金は上から下へ流れていく、上が儲かれば下も儲かる、などという戯れ言をえらい人たちが、たまに言ったりもするが、そんなものが如何に幻想であるかを煮詰めて喰わせた映画だった。プラットフォーム(仮)に閉じ込められた人間は、1日1回の食料を上から下ろされる。それは、大量で豪華な食料であるが、補充されることがないので、下層であればあるほど上層に食料を食べ尽くされ、ほとんどゼロになる。食料ゼロの状態が長く続くと、人間は最終的に何を食べるのかというと……。この階層社会の非常の嫌らしいところは、好きな食べ物を食べられる上層と全く食べられない下層を交互に経験させられること。上層で満たされた欲を経験したら、下層の地獄に2度と戻りたくない。下層の地獄を経験したら、上層でより欲を満たそうとする。食欲を満たす人間の本質的な醜さが増幅される、ちょっと気が狂いそうな、皮肉の効いた階層社会システムなのである。意味が判らないままこのシステムに組み込まれる不条理さが、現実社会の縮図の様に感じる。
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11月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「羅小黒戦記」の感想。
動いてるだけで可愛いシャオヘイとムゲンとの絆がもう尊くて尊くて……。黒猫の妖精シャオヘイは、人間たちに住処を奪われ、逃避行の末に同じ妖精のフーシーに助けられる。そして、彼の仲間と行動を共にするが、そこに謎の青年ムゲンが現れ、シャオヘイは攫われてしまう。何を考えてるか判らないムゲンに対し警戒心を剥き出しにするシャオヘイだが、能力を見抜いたムゲンはシャオヘイにその使い方を教える。シャオヘイとムゲンの旅は、「ライフ・オブ・パイ」のように過酷で美しく、発見と驚きの連続だ。そんなシャオヘイとムゲンを見てるだけでも楽しいのに、戦闘シーンでは、これでもかと動かしまくり、縦横無尽のアクションで魅せる。日本のアニメーションのような外連味のあるアクションと言うより、動かす面白さに特化したような気持ちよさを持ったアニメーションだ。シャオヘイと同じく住むところを人間に奪われ人間に敵対心を持つフーシーと妖精との共存に奔走するムゲン。奇妙な友情と旅路の果てにシャオヘイは、どんな未来を選択するのか。ラストシーンのシャオヘイには、思わずもらい泣きしそうだった。ちなみに、私の推しはナタちゃん。

「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」の感想。
数々の出会いやトラブルが傑作を生み出すピースとなっていき、繋がっていく奇跡の連続は、本当にライブ感ある素敵なコメディだった。劇作家デビューに失敗したエドモンがスランプに陥っていた中、最後のチャンスとしてつかみ取ったのが「シラノ・ド・ベルジュラック」の舞台化だった。だが、初日までの期間は3週間。エドモンとゆかいな仲間たちは、この困難なミッションに立ち向かう。真っ白な脚本。演技がド下手くそな出演者。進まない稽古。手紙の代筆が生み出すロマンス。エドモンは、様々なトラブルすらも、貪欲に、かつ詩的な脚本に仕上げていく。そして、舞台初日を迎えて「シラノ・ド・ベルジュラック」が開幕されると、そこにもまた一つの奇跡が生まれ、笑いと謎の感動に溢れ、カーテンコールまで目が離せない。

「THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女」の感想。
貧富、複雑な親子関係による生活環境、中国・深圳と香港に生きる少女を等身大で描くクライム青春映画で、不思議と視聴後感がいい。中国・深圳と香港を越境通学する少女ペイは、恵まれた家庭環境ではない中で、偶然巻き込まれた新型iPhone密輸に自分の居場所を見つける。ちょっとした小遣い稼ぎのつもりが、段々とエスカレートして、これまで以上の危ない橋を渡ろうとする。クライム映画にありがちな悲壮感は、正直、あまり感じない。むしろ、現状を脱却したい少女のひたむきさが清々しい。そこが、私がクライム青春映画と呼ぶ理由ね。ただ、少女が越境通学しなければならない事情には、当時の深圳と香港の社会情勢への理解が必要で、その辺りパンフレットのコラムが参考になった。

「ストックホルム・ケース」の感想。
銀行人質立て篭もり犯ラースから感じる人間性の良さは、それが映画的な演出だとしても、その犯人に同情したくなるには十分過ぎた。演じているのがイーサン・ホークであること差し引いても、見ていて彼に惹かれていく止められない。魅力的な犯罪者だ。犯人と被害者が長時間同じ場所にいることで、心理的な繋がり持ってしまうストックホルム症候群。その元になった事件をベースにしたスリラーだ。人質立て篭もり事件において重要なのは、警察に突入させる機会を与えずに、有利な条件を引き出すこと。最初は、犯人の要求に応えつつ様子を窺う警察も、段々としびれを切らせていく。そして、人質たちも警察に対する信頼のなさが見え隠れし、犯人に協力すれば自分が助かると意識がシフトする。ストックホルム症候群は、犯人、警察、人質の関係性が複雑に絡み合うことで初めて成立する特異なケースだということがよく判った。

「ホモ・サピエンスの涙」の感想。
1シーン1カットで綴られる悲喜交々な淡い人生譚。入る店を間違えた男性、荒廃した町、ナチス政権末期のドイツ、田舎町の小道にあるカフェに通りがかった旅(?)の女性たちが音楽に合わせて踊り、信仰を失った牧師がカウンセリングを受け、突然男性が連れの女性を平手打ちし男女間のこじれを見たりなど、日常的なハプニング、割と些細な出来事の連続を描いているにも関わらず、そのどれもが不思議と印象に残る。1シーン1シーンに人生が描かれている。それをまるで神様(あるいは天使)が見た人間とは何かを映画にしている感覚の面白さだった。

「アーニャは、きっと来る」の感想。
かつて南仏では、ナチスドイツに狙われるユダヤ人たちをスペインへ逃がす手助けをしていた。そのユダヤ人の少年少女を匿う手伝いをする羊飼い少年ジョーの健気な奮闘ぶりは、村を実効支配するナチスドイツ軍の伍長の心を動かす切っ掛けになったかもしれない。しかし、彼との友情も一発の銃声が戦争の無慈悲さを改めて思い出させてしまう。戦争は、様々な理由で人間を変えてしまうが、決して変わらない物もある。我が子への愛情に敵味方は関係なかった。愛娘をベルリン空襲で亡くし涙するナチス伍長おじさん。村に駐屯するナチスドイツ軍の良心のような存在。悲しみを思い出すナチス伍長おじさんの後ろでは、周到に計画されたユダヤ人脱出作戦が実行され、「志村ー、後ろー!」と心で叫んでしまう程度には同情してしまった。実に味のあるおじさんだった……。

10月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「BURN THE WITCH」の感想。
話の内容は、先日週刊少年ジャンプで短期連載されたものとほぼ同じだけど、ニニーちゃん(CV:田野アサミ)が冒頭に言う、「おとぎ話なんかクソでしょ」が聞けた時点でもう掴みはOKだった。のえるちゃんのおっぱいには勝てなかったし。バルゴはアニメでもウザいし。ブルーノさんとリッケンバッカーかっこいいし。オスシちゃんに声優が付いてる理由が判ったし。本当に久保帯人先生の作品はアニメになると映えるということを「BURN THE WITCH」でも証明している。そして、アニメで改めてみて、そこそこ大きなドラゴンが出現する度に町が破壊される様を見て、これは久保帯人先生流のオサレ怪獣映画ではないだろうか?最後にコミック読み切り版のラストのアレに繋げていくかっこよさね……。

「博士と狂人」の感想。
罪人はどうしたら赦されるのか。オックスフォード英語大辞典の編纂に挑む文献学者のマレーと精神病院に収監された殺人犯のマイナー。年代ごとにおける単語の用例について当時の文献から引用するという作業に協力したマイナーは、文通を通じてマレーと目標を共有しあい、友情が癒しとなって、彼を、そして、夫を彼に殺されたイライザの心を救っていく。辛い過去を乗り越えた先の希望や赦し。そこだけ見ればいい話だが、後にマレーとマイナーを絶望に突き落とす胸くそ悪い展開が待っている。辞書編纂と同時に卓越した協力者であったマイナーの名誉を回復させる戦いが待っているのだ。ショーン・ペンの鬼気迫る名演が光るからこそ、マレーとマイナーの友情が美しく、ホントに胸が締め付けられる思いがする。

「スパイの妻」の感想。
最後まで見て、これはやられたなあ、と唸らざるを得なかった。日本の貿易商福原優作は、満州で見た関東軍の所業を記録した書類とフィルムを持って、軍国に突き進む日本を国際世論に訴えよう試みるが、そのことを妻の聡子に知られてしまう。更に、福原にスパイの容疑がかけられ、周辺が慌ただしくなる中、自分の正義を貫く夫とその夫への愛の狭間で何を信じるかの葛藤が描かれる。優作は、そもそも妻の聡子を自分に企てた陰謀にまきこむ気はなかった。アメリカに高飛びして、それから後で妻と一緒に住もうくらいの算段だったのだろう。だが、聡子からしてみればたまったもんじゃない。見ようによっては、夫の身勝手に振り回される妻に映る。優作の最後の行動は、己の正義を全うするためなのか、妻への愛ゆえなのか。日本帝国主義の時代の荒波に抗い、結果的に夫の望んだ通りになった日本を見る聡子に胸が苦しい。

「ストレイ・ドッグ」の感想。
私が見た映画の中で最もダーティでマッドなニコール・キッドマンを見た。エリン・ベルに届いた1通の私信。それは、17年前の苦い記憶を呼び覚まし、復讐へと駆り立てるに足るだった。かつて潜入捜査で犯罪組織のボスのサイラスを取り逃がした上に、相棒まで殺されたベル。その結果、刑事を続けながらも、酒に溺れ、16歳の一人娘シェルビーへの子育ても上手くいかず、身も心もボロボロになりながら、ベルはわずかな手がかりを元にサイラスを追い詰める。もういい休めと言いたいところだけど、サイラスを始末しない限り、彼女が心の安らぎを覚えることはない。壮絶な復讐と贖罪の物語に1秒も目が離せなかった。

「スタートアップ!」の感想。
こんなに素敵なナーメテーター映画があっただろうか。将来の夢もないが生きたいように生きる高校中退のテギルとサンピル。家出したテギルがたどり着いたのは、辺鄙なところにある中華料理店。そこで住み込みで働かせてもらうが、そこの料理人コソクは謎すぎる男だった。一方サンピルは、手早く稼ぎたいからと消費者金融で働くが、そこはいわゆるヤミ金で……。テギルの母ジョンヘ。テギルをぶん殴った少女ジョンギュ。テギルは、頭悪いなりに出前仕事を覚え、強面料理人コソクに突っかかっては返り討ちに合う(基本的にケンカが弱い)。そんなテギルの新しい日常の楽しさの裏で、サンピルは闇社会の一端を見る。親友の2人が、まるで対照的な人生を歩み始めているのも興味深い。現状を変えたい人たちがコソクとテギルを中心にそれぞれ人生を再“始動”していく。そして、コソクの正体が明らかになり、映画ファン言うところいわゆるナーメテーターな展開が少し見られるが、奇しくも今年7月に「悪人伝」を見ていたせいで妙なシンクロ感があって、マ・ドンソクファンはニヤリとするところだろう。あと見割った後にジャージャー麺が食べたくなるぞ。

「罪の声」の感想。
実在のグリコ・森永事件をモチーフにしたサスペンス。かつて日本を騒がせた大手菓子メーカー社長誘拐および脅迫事件があった。それに間接的に関わってしまった家族たちの人生はいかなるものか。一人は、事件の事実を知らず大人になり、結婚して、子供も産まれ、穏やかな日々を過ごし。一人は、犯した罪を知らされないまま、その罪を知るものたちから逃れることが出来ず、真っ当な生活も出来ない苦役の日々を過ごした。過去の事件を特集記事として再取材する阿久津は、犯行に使われたテープの声である曽根俊也と共に、様々な点と線がつながり、未解決だった事件の真実へ向かっていく。知らず知らず大事件の片棒を担いだ、子供の声の持ち主である星野源演じる曽根俊也の葛藤。取材で明らかになった、その後の子供たちの人生を見ると胸が苦しい。そして、小栗旬が演じる阿久津の事件に対して真摯に向かう姿勢はに好感の塊でしかない。信じるに値する新聞記者とは、こういう人を言うのだろう。現実にこんな好感度の高い新聞記者がいるなら見てみたいものだが。

9月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「人数の町」
なかなか気持ちの悪いディストピアSFだった。様々な理由で社会からドロップアウトした人たちを集めて、ある一定のルールと役割を果たす限り自由に生活していい謎のコミュニティー。性別と外見、あと割り振られた“番号”以外に個人を特定するものは全てを失う。その代わり、衣食住全て揃い、しかもフリーセックス。入るのも自由。実は出るのも自由。ココで生きるために与えられる役割こそが映画のタイトルである。それがあまりにも淡々と描かれている。しかも、全体的に殺風景な所がディストピア感を醸し出して気持ちが悪いのだ。そして、この町の意味を知ったとき、ネットやTVニュースなどで話題になるような、ある種の事柄が違った目で見えるようになるよ……。

「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」
基本的にTV版の総集編なのだけど、コトブキ飛行隊と仲間たちVSイサオと自由博愛連合に話の焦点を絞っている。結果、TVアニメ版以上にイサオが悪人である。編集の仕方がだけで、結構印象が変わるね。コトブキ飛行隊結成前夜の新規エピソードは、キリエとエンマの出会いを描きホントに幼なじみだったんだなと再認識したり(キリエはエンマよりチカとの絡みが多いので)、レオナとザラのバディが増し、各キャラがいい感じにTVアニメ版の補完になってる。それより、コトブキの大迫力空戦シーンを劇場スクリーンで見られるというだけで充分価値のある映画だった。家のテレビ(あるいはPCのモニター)で見るのとは違い、「荒野のコトブキ飛行隊」の空戦シーンは、本当に劇場スクリーン映え、劇場音響映えする。最近YouTubeで配信されたTVアニメ版本編を全話見たというのならばオススメできるが、一見さんには……。

「ミッドウェイ」
海は全てを覚えている。また一つ、「艦隊これくしょん 艦これ」の提督たちが見るべき映画が出来てしまった。SBDドーントレスの凄腕パイロットでパールハーバーの復讐に燃えるベスト大尉。日本の軍事作戦を先読みするべく暗号解読に勤しむするレイトン少佐。海軍力に勝る日本軍(この頃日本海軍は実際強かった)に対して起死回生の一手を打つべく、地上では情報戦が繰り広げられる。そして、AL/MI作戦を察知した米海軍の反撃が始まるのだ。日本の空母機動部隊(赤城、加賀、蒼龍、飛龍ほか)に挑む空母エンタープライズと空母ホーネットの航空隊との空戦シーンは、先日観た「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」と一味違った迫力。ドーントレスによる急降下爆撃は、まるで一刀、必殺を狙う青い目のサムライのようだった。真珠湾、珊瑚海、アリューシャン、そしてミッドウェイ。軍事考証的なデタラメ(大概の戦争もの映画は避けて通れないが)は、多少あるもののミリタリーエンタメとして十分すぎる内容だ。ただし、一航戦および二航戦が好きな提督の皆さんは、相当な覚悟を持った方が良い。あと、南雲中将が微妙に無能扱いされるところとか(苦笑)。エンドクレジットで太平洋戦争に赴いた日米全ての将兵たちへの哀悼と戦争が如何なるものかを語りつつ、最後は、この言葉で締めくくられる。「海は全てを覚えている」

「TENET」の感想。時間を逆行させる技術は、世界を革新へ導くのか、それとも破滅へ導くのか。時間逆行サスペンスアクションだけに、主人公(名前がない)が動いている順行の時間軸と逆行してる過去の時間軸が物語上複雑に交錯する。アクションや物語は、思ってたより情報量が多く、でも話の展開は立ち止まらずテンポどんどん良く進むので、理解が追いつかない部分も。一度観ただけではなく、2度、3度見れば新たな発見があるかもしれない。特に空港内での航空機爆破&格闘シーンやカーチェイスシーンは、そこにある意味や意図をある程度判った上で、もう一度観ると面白さが増すと思う。パンフレットの解説や某ニュースサイトの「TENET」解説動画を見て後から判った。あとニール。主人公の相棒のニールに注目してほしい(大事なところだから2度言った)。「TENET」は、何度か見る度に面白さが判ってくる、いわゆるスルメ映画の部類だと思っていい。

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の感想。あれから数十年後、電波塔が建ち、言葉を伝える手段が手紙から電話に変わっても、伝えたい人、伝わった人の想いは変わらない。原作小説では明かされていたギルベルト少佐のその後を描くヴァイオレット・エヴァーガーデン最後の物語。原作とは物語の展開が大きく違う、アニメオリジナルの物語と知っていたけど、判っていても再会したあのシーンには心を揺さぶられる思いだった。尊い。本当に尊い。そうだね、ヴァイオレット……うん……そうだよね……。その間にあるヴァイオレットが受けた依頼。余命幾ばくもない少年ユリスが、家族と親友リュカに託した手紙のエピソードが、ギルベルト少佐が果たすべき事と重なるのもいい。そして、亡くなった祖母が残した50通の手紙を孫娘が発見し、託した想いを辿っていく旅路の果てに彼女は何を見るのか。ヴァイオレット・エヴァーガーデンの物語は終わっても、彼女を紡いだ物語は、これからも語り継がれていく……。

「映像研には手を出すな!」の感想。予想外にと言ったら失礼だけど、期待を裏切らなかったTVドラマ版の本気度が劇場版で結実。浅草氏の最強の世界が実写映像化される。CG化されたロボ研と浅草氏の巨大ロボ・タロースは、もうそれだけで作品を作って欲しいレベルの完成度でバリバリ動く。水崎師のロボアニメーションは実写でも(少しだけ)描かれる。名プロデューサー金森氏が抜群のマネジメント能力を発揮する。百目鬼氏の音響へのこだわりもいい。原作のイメージを損なわず(特に実写の金森氏は完成度が高い)、近年のマンガ実写化では、とても成功していると思う。
それ故に不満が点がある。金森氏に(結果的に)妥協させるシーンを入れてしまったことだ。映像研とロボ研が生徒会による部の統廃合を免れるため共同でロボットアニメを作る計画をたてる。映画では、最初この作品発表の場を同人誌即売会「コメットA」に設定していた。これは原作、アニメだともう少し先のエピソードになるので、映画オリジナルだけどスケール上げてきたな、と期待していた。そこに教師と生徒会が、映像研を呼びつけ、「部活動で金儲けをするとはけしからん」といちゃもんをつけられる。当然、原作やアニメを多少なりとも知ってるなら、金森氏が教師と生徒会を言いくるめて突っぱねるところ想像するだろう。でも、そうじゃなかった。学校外活動を部の実績と認められず、文化祭への出展へと舵を切り直せねばならなくなった。ここは本来なら金森氏がかっこよく言いくるめるシーンになるはずが、そうならずカットに。これは、本当にもったいなく残念な部分だった。
あと、アニメ版で金森氏がラーメン食べるときに長い髪をアップにまとめるフェチ度の高いシーンも実写にならなかったのも残念だった。あとあと、せっかく「ロボ対カメ」完成したアニメーションは全部見たかった。それ以外は、世にも幸せな実写映画化だった。なんだか、珍しく不満ばかり感想で書いているけど、実写版「映像研には手を出すな!」の持ってるポテンシャルの高さを見ると、もっとやれただろうと逆に期待をしてしまうのだ。

8月に観に行った映画感想まとめ【2020】

「ジョーンの秘密」
この映画を8月のこの時期に公開したことには、実は大きな意味がある。2000年5月、老婆のジョーンは、英国保安局MI5にソ連へのスパイの容疑をかけられ拘束された。男女2人の取調官を前に彼女は過去を語り出す。1940年代のイギリス。ジョーンは、ある思いから核兵器をあえて敵に持たせることが戦争の抑止力になると考え始めていた。ジョーンがそう信じるに至り、共産圏のスパイ行為に加担したのは何故なのか。学生時代に愛する人が共産主義者だったから?それもあるかもしれない。だが、ココで日本の太平洋戦争が関わってくる。ジョーンが研究協力していた原子爆弾の威力を知ってしまったから。ジョーンの回想とスパイ容疑をかけられた現在のやりとりが交互に物語られ、彼女が確固たる信念で核戦争を起こさないために行ったことは正しかったのか。結果的には、日本の広島と長崎に原子爆弾が投下されて以降、少なくとも核戦争と呼ばれる状態になっていない。国家を裏切ることになっても、この点においてジョーンの行いは正しかったと言えるだろう。それでも罪は罪なのだが、彼女なりに悔いのない人生だったのではなかろうか。

「ブックスマート」
私の数年間の(真面目に勉強した)学校生活は、努力は何だったのだ?などという人生の後悔を吹き飛ばすべく、モリーとエイミーのが企てた卒業パーティー潜入計画は、本当にハチャメチャで爆笑の連続だった。様々なパーティーを奇しくもハシゴして、高校生活ほとんど遊ばなかった分を、まるでこの夜だけに凝縮。モリーとエイミーのはっちゃけっぷりが面白い。その一方で、モリーは、それまで積極的に関わっていかなかったクラスメイトの意外な一面を知る。世の中には、自分の努力の積み重ねを軽く上回る“上手くやれる”人間がいる。一言で言うと、非常に要領のいい人間。絶望しかけたモリーがエイミーと共に自棄っぱちのように遊びまくるのだが、同時に自分の本当の気持ちと向き合う。特にエイミーの恋模様は、一部の人にとって胸をときめかせるね。

「きっと、またあえる」
インドの名門ボンベイ工科大学に入学したエリートの卵……の最底辺たちによるボンクラ大学ライフ。まさか、これが感動ドラマになっていくなんて想像できただろうか。インドにおける大学受験戦争の厳しさは、日本と比べものにならない。インドの名門大学、一流大学は、合格率わずか1%。目指し日々猛勉強し、極めて狭き門に向かって人生をかけた試験に臨んでも、99%は路頭に迷うのだ。主人公アニの息子ラーガヴが受験失敗のショックで飛び降り自殺を図ってしまい、一命を取り留めるも脳挫傷により予断を許さない状態に。その彼の命を繋いだのが、アニの語る大学時代のスポーツ大会ゼネラル・チャンピオンシップにおける奇跡だった。これを切っ掛けにかつての仲間たちがアニの下へ集まり、それぞれがゼネラル・チャンピオンシップの苦闘の思い出を語り始める。ただの“負け犬たちのワンスアゲイン映画”ではない。非常に痛快だが、この邦題「きっと、またあえる」にあるように、これはかけがえのない友と命を繋ぐ物語なのだ。

「オフィシャル・シークレット」
自分の信じた正義で世界は変わるのか。イラクと戦争するために手段を選ばぬ米国のやり方に憤りを覚える英政府通信本部(GCHQ)の女性キャサリン。彼女は見た1通のメール、米国が国連の主要メンバーに対して盗聴を行うことを新聞社にリークする。だが、その勇気も虚しく、イラクには大量破壊兵器がある、という理由で押し切ったアメリカはイラクとの開戦に強引な手で踏み切ったワケだけど、実は証拠(エビデンス)がなく、果たして見つかっていない。そして、キャサリンは、情報漏洩したことを告白し、公共秘密法違反の容疑で逮捕され、愛する夫の運命すらも変えてしまう。機密情報漏洩と間接的に戦争を正当性と問う裁判に発展するポリティカル・サスペンスで面白い。

「2分の1の魔法」
予告編等で見ていた物語の印象と大分違った展開に良い意味で裏切られた。自分に自信が持てないイアンと自信だけはある魔法歴史オタクでボンクラな兄バーリー。この2人は、幼い頃に父を病で亡くしていた。イアンは、16歳の誕生日に父の形見として貰った魔法の杖で父親を復活させる魔法を試みるも失敗。そこから復活の魔法に必要な不死鳥の石を探す冒険が始まる。イアンは、ボンクラな兄を家出厄介な存在を思っていたが、父が復活したらやりたいことリストを見て改めて考える。自分がどれだけ兄に大切にされていたかを。そして、その兄バーリーは、父親が亡くなる寸前にやり残したことあった。兄弟の尊い絆の物語であり、出来ないという思い込みを可能にする勇気こそが魔法ということを教えてくれる。あと、この日本版エンディングテーマにスキマスイッチの「全力少年」を選んだ人は、マジ今回MVPものだと思う
プロフィール

藤堂志摩子

Author:藤堂志摩子
初めまして。私は、仮想世界の女子校に通う“エターナルセブンティーン”藤堂志摩子といいます。乃梨子の「阪神タイガースを生暖かい目で見守る志摩子さまが好きだ!」という微妙なリクエストで生まれた新しい形のバーチャルネット白薔薇さまです。どうかよろしくお願いします。
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