fc2ブログ

9月に観に行った映画感想まとめ【2022】

「ブレット・トレイン」の感想。
伊坂幸太郎先生の原作小説「マリアビートル」は読んでいないが、愉快で、バイオレンスで、ド派手な物語で、如何にもデビッド・リーチ作品という感じだった。魔改造された架空の東京~京都は、サイバーパンクっぽくて、むしろ全然アリ。伏線(?)回収の仕方がとても面白くて、「そ、そうくるかあ」と思ったし、最後は大惨事で変な笑いが出そうだった。

「ギャング・カルテット」の感想。
凄腕金庫破りのイェンソン一味が狙うお宝は、かつてのフィンランド王国に伝わる王冠……に付いていた伝説の石。この石を巡ってフィンランド大統領、王座を狙う男、大企業が、それぞれの思惑で動き出す。コレだけ聞くと「ルパン三世」っぽい話に思えるが、そんなにシリアスな物語じゃないし愉快なクライムコメディであり、ファミリィの物語だった。チャールズ・イングヴァル・イェンソン、通称シッカンは、綿密な計画とチームプレイで盗みを働いていく。故に一人のミスが命取り。それで、“運悪く”シッカンだけ刑務所行きになるワケだけど、彼が服役してる間に、仲間たちに心境の変化が出て来てしまう。シッカンがいないと泥棒出来ない。稼ぎゼロ。だからカタギになろう。シッカンが出所し、フィンランド王家のお宝を盗みに行く計画を出しても、盗みに乗り気なれず、皆で彼の元を去ってしまう。それでも、シッカンは、町にいる他の仲間と計画を遂行する。石にこだわる理由は、最後に明らかになるが、悪党なりの家族の絆のようなものを感じてちょっと謎の感動。

「グッバイ・クルエル・ワールド」の感想。
社会に居場所がない、クズにならざるを得なかった者たち。カタギを続けたい元ヤクザ。ただ金が欲しい犯罪者。裏切られた地方の元知事秘書。借金返したいデリヘル嬢とそのツレ。奪った金を巡ってヤクザと悪徳刑事とクズたちが狂乱を演じていく。真っ当に生きられたら生きたいのに、それが上手く出来ない。そして、若者は、狂気の世界へ足を踏み入れてしまう。裏社会で生きることとそこから抜けて生きること。それぞれが、“残酷な世界”を足掻きながら生きていく様は、なかなか見ていて辛い。

「秘密の森の、その向こう」の感想。
ネリーとマリオン。小屋を作って。お泊まりして。ゲームで遊んで。ビニールボートで冒険して。ネリーは、割と早い段階で、マリオンの正体に気づくのだが、深く考えることなく交流を続ける。祖父を失い、母も消えてしまった喪失感を埋めるように。期間限定の、そんな仄かな友情が、美しい思い出と共に未来へ繋がっていく。ラストシーンにおけるネリーとマリオンの再会。2人の間にだけ感じることができる通じ合った空気と時間。何物にも代えがたい満たされた空間であった。

「LAMB/ラム」の感想。
ある牧羊を営む夫婦の喪失を埋めたのは、“一人”の羊だった。生んだ親羊から“子羊”を取り上げて、自分の娘のように育てるマリアとイングヴァル。毎日、家の前で鳴く親羊。喪失と愛の物語は、静謐と気持ち悪さを合わせ持ち、映像の美しさに歪さが見え隠れする。何故、あのような羊が生まれたのか。その真実と報いのラストが悲しくつらい。喪失と愛の物語という点では、「秘密の森の、その向こう」と共通する部分もあるが、その結末は全く正反対だった。
スポンサーサイト



8月に観に行った映画感想まとめ【2022】

「Gのレコンギスタ IV 激闘に叫ぶ愛」「Gのレコンギスタ V 死線を越えて」の感想。
やはり、この2作品は、連続で観ることに意味があるのだと思う。「IV」のOPがTV版後半のMay J.「ふたりのまほう」に変わった時点で、個人的につかみはOK。ビーナス・グロゥブとカシーバ・ミコシのデザイン設定が変わったり。G-セルフ パーフェクトパックのフォトン・トルピードの描写が生々しくなったりなど。ストーリーの流れはTV版と同じなのに、感覚的には別の作品を観ている感じになる。特に後者の方は、後のベルリ対マスク(ルイン・リー)の対決において意味を持つ。動揺するベルリ。G-セルフで戦うということがどういうことか。ベルリは、ようやく気づくのだ。そして、ベルリ・ゼナムの長い旅は、間もなく終わりを迎える。メガ・ファウナ(アメリアの海賊部隊の母艦)は、再び地球圏でキャピタル・アーミィ、アメリア軍、ドレット軍(トワサンガ)、そしてジット団(ビーナス・グロゥブ)の卍巴の戦いに突入してしまう。いわゆるOPをすっ飛ばして、初っぱなから戦闘突入。ロックパイとの戦いにベルリの覚悟が見える。ルイン・リーの為に奮闘するマニィ。マスク(ルイン・リー)は、クンタラ生まれの劣等感とベルリに対する嫉妬を思い切りぶつける。本編約96分、ほぼクライマックスなので、怒濤の展開に色々情緒をぐちゃぐちゃにされるも、満足度は高い。「IV」と「V」を短い間隔で連続上映するのってどうなん?と思うかも知れないけど、これは実質前後編なので、「IV」「V」を一気に見る方がアガる。ラストは、TV版と同じく戦いの後日談が描かれているが、ルイン、マニィ、ノレド、アイーダ、そして、ベルリのその後がTV版より少しフォローされている。この戦いの果てに見つけた、それぞれの幸せを見届けて欲しい。最後にバララ……彼女は、「∀ガンダム」で言うところのメリーベルのようなポジションで、なんだかんだ生きのこると思っていたが……。

「L.A.コールドケース」の感想。
ヒップホップスターのノトーリアス・B・I・Gと2パックの射殺事件を追うクライム・サスペンス。ジャーナリストのジャクソンが捜査をしていた元刑事のプールを訪ね、その事件が何であったか再び語れれることで、ある真相が見えてくる。これは、現実でも未解決の事件なので、非常にモヤッとした終わり方なのだけど、ノトーリアス・B・I・Gの事件を追えば追うほどLA警察の汚職と腐敗が浮き彫りになり、真実がドス黒い闇に包まれていく。底なし沼を歩いてるような映画だった。

「ソニック・ザ・ムービー ソニックVSナックルズ」の感想。
ロボトニック役のジム・キャリーがキレキレの演技と個性で無双し、前作同様主人公ソニックを食ってしまう勢い。だが、ライバルのナックルズと広橋涼さん吹き替えのテイルス(ココ超大事)の友情パワーも負けてはいない。というか、孤独なヒーローだったソニックを助ける可愛いテイルスを愛でる映画と行っても過言ではない。クライマックスでソニックチームが、ロボトニックのハルクバスターめいた巨大ロボと戦うシーンは圧巻。映画ならではのソニックの面白さを一番感じた

「バイオレンスアクション」の感想。
カジュアルな殺し屋コメディで、橋本環奈さん演じるケイのアクションが見どころなんだけど、正直、それ以上に太田夢莉さん演じるスナイパーのだりあがかっこよくてずっと見ていたい。アクションの見せ方を色々工夫してるけど、正直、少し前に見た「ベイビーわるきゅーれ」と比べたらパンチの足りない部分もある。

「Zola」の感想。
ゾラとステファニは、ストリップで大金稼ぐ旅をするはずが、売春させられるハメになり、でも、「1発150ドル?安すぎ。500ドルにしたろ」と突発的に金額を変え、写真も扇情的に撮り直してネットにうpした途端、8000ドル稼ぎ出し思惑通り一儲け。このたたかさが面白い。ここから悪夢のような売春旅が本格的に始まるのだけど、トラブルの連続の割に悲壮感が余りないので、セックスワーカーで生きる女性の逞しさを感じた。

「NOPE」の感想。
80~90年代のUFO好きなら誰しも知ってるエイリアン・アブダクションを現代的に解釈。ただのUFOだと思ったら、有機的な驚きの形態に変化し、ここがエヴァのオマージュなのかと察した。牧場主OJとエメラルドの兄妹が、父の変死を切っ掛けにUFOらしき謎の飛翔物を探っていくと同時にUFOのバズり動画を撮るプランを立てる。宇宙人が出るでもなく、戦うでもなく、ただ“得体の知れない空飛ぶ何か”に対する謎と恐怖、それをなんとしてもカメラに収めたい好奇心が混在して、ホラーでありSFという独特な視聴感を味わえた。何より、一番インパクトを与えたのが、遊園地経営者ジュープが子役時代に出演していたシットコム「ゴーディーズ・ホーム」に登場したチンパンジーが出演者を惨殺していくシーンとOJの妹エメラルドがバイクで「AKIRA」滑りするシーンね。

7月に観に行った映画感想まとめ【2022】

「バズ・ライトイヤー」の感想。
結論から言うと、「ライトイヤー」は、1作限りのスピンオフに終わらせず、「トイ・ストーリー」に次ぐ新たなフランチャイズとして続けるべき。スペースレンジャーとして輝かしいバズ・ライトイヤーの経験で初めての失敗。それにより、長い月日を未知の惑星で過ごすことになってしまった。その責任から、バズは、惑星脱出に必要な新たなハイパースピード燃料のテスト繰り返す。テスト4分は、地上の4年。スピードが出れば出るほど、その差は広がっていく。バズにとって十数日の出来事は、友人のアリーシャ・ホーソーンには数十年であり、いつしかそこにしっかりとした生活基盤が築かれていた。失敗の記憶から時間が止まっているバズと前に進み続けているアリーシャたち。その対比が切ない。そして、意外なところから最適なハイパースピード燃料の混合率が判明し、新たな未来が動き出す。個人的には、「WALL・E」以来のSFマインドの高い作品。ウラシマ効果以外にも時間遡行が関わる仕掛けが用意されていて、かつて、アンディが夢中になった「ライトイヤー」がこんなにもSFスペースアドベンチャーとしてしっかり作られていたなんて。

「エルヴィス」の感想。
エルヴィス・プレスリーの絶頂と凋落、そして再起の壮絶な人生を圧倒的ライブパフォーマンスで観てしまったら、そらサブスクでプレスリーのアルバムを聴きまくってしまうさ。それくらい「エルヴィス」の画には説得力があった。オースティン・バトラー演じるエルヴィス・プレスリーは、その魂が乗り移ったかのような怪演とライブに、正直、初めてTOHOシネマズの普通のIMAXで2400円払う価値をみた。この感動は、「ボヘミアン・ラプソディ」以来よ。プレスリーが目指した音楽のルーツには、故郷メンフィスのブラックミュージックがあった。その影響で生まれた独自のロックンロールは、白人と黒人の文化の融合であり、当然目障りに思う輩もいたワケだが、プレスリーは、それを音楽の力でねじ伏せぶっ壊した。このプレスリーの才能と音楽を金に変えたのが、今作の語り部であるトム・カーター大佐。彼は、プレスリーのクリエイティブに何一つ影響を与えていないが、(金の亡者の悪徳マネージャーであるが)彼がいなければプレスリーという偉大な才能が世に出ることはなかったかもしれない。

「ソー:ラブ&サンダー」の感想。
ソーのノープランな自分探しの度なんて開始10分くらいで終わり。その後、怒濤の勢いで神狩りを行うゴア・ザ・ゴッドブッチャーとの熾烈な戦い始まるワケだが、あんまり悩まずノリと勢いで世界を救うソーの面白さは今作でも健在。しかし、今度の敵ゴアは、ネクロソードというあらゆる神を殺せる剣の使い手。影の軍団を率いて新アスガルドへ攻め込むゴアに立ち向かうのは2人のソー。ムジョルニアを受け継いだソーの“元カノ”ジェーン・フォスターは、ソーのいない新アスガルドを護るに相応しい活躍を見せるが、彼女がマイティ・ソーになった理由が少々つらい。正直なところ、今回の敵であるゴアよりも、ゴアを倒すためにソーたちが助けを求めたゼウスの方がよっぽど悪役だ。実際ゼウスは、「なんで下級神をぶっ殺すだけのゴアを倒すのに手を貸さなきゃならんのだ?」とソーの言葉を歯牙にもかけない。そこから、ゼウスの武器サンダーボルトを“ぶんどる”流れのかっこよさ。ゼウスが如何にも銀河最強の神という風格を持っているだけに、どうしてもゴアの小者感が否めない。そのゴアをクリスチャン・ベールが演じている。特殊メイクの上からでも判る怪演なのだが……。

「リコリス・ピザ」の感想。
主演のクーパー・ホフマンが、演技に父親のフィリップ・シーモア・ホフマンの面影をチラつかせて、コイツはいずれ名優になる予感を感じさせる。いや、ホントに父親そっくり。それはそれとして、子役の仕事を持つ少し大人びた高校生のゲイリーと20代半ばで将来の見えない撮影助手のアラナの恋愛は、一夏の冒険と呼ぶには刺激的で、でも甘くないものだった。ゲイリーは、一目惚れしたアラナに相応しい大人の男になりたくて、子役以外のビジネスを展開する。アラナは、つまらない現状の打破したくてゲイリーの思惑に付き合う。ゲイリーの片想いに対して、アラナは利害の一致の関係でしかなかった。コレまでにはない刺激的な日々。アラナは、ゲイリーとくっついたり離れたりを繰り返しつつも、ゆっくりと彼の想いに近づいていく。年の差恋愛を描く作品は数多くあるけど、急がず、焦らず、染み入るような叙情的恋愛がラストの大きな感動を繋がっていていい。

「炎のデス・ポリス」の感想。
タイトルとポスターの印象だと、以前見た「フリー・ファイヤー」みたいなガンアクションを想像していたけど違った。砂漠の警察署に吸い寄せられるように集まった悪党たち。その目的は何か、生き残るために誰を信じるか、本当の敵は誰かのクライムサスペンスで、よい意味で裏切られた。正義感の強い新人警官で主人公のヴァレリーが要所でみせるガンマンしぐさが面白いと思う一方、オートマチックではなくシングルアクションリボルバー(スタームルガー・ブラックホーク)に拘るのか、トグサのマテバと同じくらい謎だけど。

「ボイリング・ポイント/沸騰」の感想。
ある人気レストランに訪れたの最大のピンチに密着したモキュメンタリーを見ているようで、面白いが胃が痛くなってきた(苦笑)。厨房スタッフとホールスタッフ。それぞれの人間模様がずっとワンショットで描かれるので、ホントにその場にいるような臨場感とリアリティがすごい。店の安全評価が下げられ。食材の発注ミスがあり。わがままな客のオーダーに付き合わされ。厄介なSNSインフルエンサーに付き合わされ。黒人のホールスタッフが客から差別的発言を受け。店に出資してるアリステアが抜き打ちで訪れ。家庭の問題を抱えたオーナーシェフはストレスマッハ。そして、食物アレルギー持ちのお客様が……。人気レストランの舞台裏で起こりえること、労働環境に抱える問題をこれでもかと凝縮させて、1秒も目が離せない作品だった。

「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」の感想。
もし、カプコンのゲーム「ディノクライシス」シリーズを遊んだことがある人なら、その時の楽しさと怖さを大きなスクリーンで見ることになる。むしろ「ディノクライシス」の映画化?オーウェンの養子になったシャーロットの秘密。恐竜と共に生きること。一応シリーズの完結なのだけど、一番アクションアドベンチャーに振った作品であり、「ジュラシック・パーク」という作品のテーマの集大成みたいな、撮りたかったことは全部入れた作品であったと思う。同窓会映画と言われれば、まあ、そうだけど……。

「アプローズ、アプローズ!」の感想。
囚人たちがサミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を演じる。それは、単なる更生プログラムではなく、演劇を通じて自分たちの自由を語ることでもある。囚人たちは、いつだって刑務所という“不条理な世界”から飛び立ちたいのだ。だからこそ、落ち目の舞台俳優で今回演出をすることになったエチエンヌの下、演技の練習し、舞台に立っている囚人たちは自由なんだ。囚人たちの感じる自由の素晴らしさが、そのまま演技に反映され、それが観客に伝わり感動を呼ぶ。同情で彼らがオデオン座に立つところまでたどり着けるワケがないのだ。一世一代の大舞台で、エチエンヌが見た光景とは。何を思い、何を感じて、ここまでたどり着いたのか。エチエンヌが舞台にかけた思いに涙して欲しい。

6月に観に行った映画感想まとめ【2022】

「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」の感想。
基になっているTVアニメ版「ククルス・ドアンの島」と大体同じ物語だけど、ドアンと孤児たちの生活やジオンが島を狙う理由、ドアンと元部下たちとの因縁など色々盛られていて非常によく出来た番外編映画だった。特に番外編っぽさを感じたのは、ブライト・ノア“少佐”を含めたホワイトベースクルーの緩さ。ブライトは、上からの命令に“しぶしぶ従う”という態度が見え見えで、ここはすごく安彦良和的な演出に思えた。“軍法会議もの違反”に目をつぶったりね。アムロと孤児たちの交流を念入りに描いているのも、個人的には好感が持てる。戦争被害者としての子供たちが懸命に生きる姿は、これまで様々なガンダムでもあまり正面から描かれてこなかった。「機動戦士ガンダム」の1エピソードに過ぎなかった頃と違って、最後のアムロのセリフは、この長編劇場版だからこそ響くものがある。まあ、あの島で一番逞しいのはヤギだけどね(苦笑)。ドアンが孤児たち共にアレグランサ島で生活する本当の理由とは?かつてドアンが所属していたジオンのサザンクロス隊も魅力的だった。そもそもドアン自身が歴戦のMSエースで、率いるサザンクロス隊も当然古強者たち。彼らの駆る新型の陸専用高機動型ザクIIのカッコ良さは、何故ドアンザクと一緒にキット化しないのかと不思議なくらい。3DCGのガンダムとザクが、トリッキーでスピード感ある戦闘をみせるのも見どころ。近年のリアルロボット系3DCGにないような外連味も嫌いじゃない。この完成度なら「オリジン」本編のアニメ化を期待してしまうのも無理はない気がする。

「オフィサー・アンド・スパイ」の感想。
スパイ容疑を掛けられ有罪となったドレフュス。その冤罪の証拠を突き止めようと奔走する軍情報部のピカール中佐。彼はその真相に迫っていく。ドレフュスは明らかに冤罪で、その証拠も存在している。にも拘わらず軍上層部が適当な理由でもみ消し、隠蔽しようとする。そして、その魔の手はピカール中佐自身にも。何故なのか?そこに存在するのは、当時のフランスに存在していた反ユダヤ主義であった。改めてドレフュス事件を映像化すると、仏政府にとって非常にお粗末な冤罪事件であったことが浮き彫りになる。最終的には無罪を勝ち取ったにも拘わらず、差別の根深さに今ひとつスッキリとはしない。

「峠 最後のサムライ」の感想。
戊辰戦争の真っ只中。迫り来る西軍に対し、長岡藩主への忠義と民衆のため和平への道を探りながらも、戦させざるを得なかった男、河井継之助。圧倒的不利の中、一進一退の攻防をしつつ、常に民衆のための戦いを心がけ、西軍の数に対して知略と新兵器でカバーする。しかし、そんなギリギリの戦いも限界が来て……。皮肉にも、河井継之助の戦いは、昨今のヨーロッパにおける国際情勢と妙にシンクロする。もう逆境しかない戦い。それでも、民や長岡武士たちは、河井継之助についていく。何が、彼をそこまで惹きつけるのか?役所広司さんからは、類い希なるリーダーシップと軍略で負けない戦いを目指す“ラストサムライ”河井継之助の生き様が全身から滲み出て、ホント唯一無二の存在感だった。

「ザ・ロストシティ」の感想。
攫われたロマンス小説家ロレッタと彼女の作品の(ほぼ)専属の表紙モデルをしているアランとの幻の古代都市を巡る秘境アドベンチャー。……と書いたら何となく「ナショナル・トレジャー」や「ハムナプトラ」的なもの想像してしまうかも知れないけど、実際は小説を書くこと以外ポンコツのロレッタとイケメンで素晴らしい肉体美なこと以外ポンコツのアランが秘境探検するドタバタポップコーンムービーだ(褒めてる)。アランを演じるチャニング・テイタムのケツも拝めるしね。申し訳程度の秘境探検要素(苦笑)なのはご愛敬だけど、エンタメアドベンチャーとして気楽に楽しめる満足度の高い映画だった。あと、ブラッド・ピットの無駄遣いっぷりがもうね。

5月に観に行った映画感想まとめ【2022】

「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」の感想。
ヒーロー映画としてファンを満足させるポイントしっかり押さえつつ、サム・ライミ監督が得意のホラー要素をふんだんに盛り込んだ豪華ミックスグリルみたいな濃い映画だった。ワンダ/スカーレット・ウィッチが闇堕ちした理由は、「「ワンダヴィジョン」を見てね」という感じだが、物語としては、マルチバースを渡る能力を持つアメリカ・チャベスと彼女の能力を狙うワンダ、そのために必要な魔導書ダークホールド、これらを巡るストレンジ・ジャーニーだ。あちこちの世界を巡って行くけど、あまり混乱しないで見られる構成の妙もいい。別世界のヒーローチームであるイルミナティを皆殺しにしてストレンジたちを追いかけるワンダ/スカーレット・ウィッチは、完全にホラー映画の演出そのもの。物語の後半、ストレンジがネクロマンシーめいたことやりだした辺りで、勘のよい映画ファンなら「死霊のはらわた」シリーズを連想しただろう。マーベルヒーロー映画ファンがどう思ったか判らないが、サム・ライミファンなら満足度が非常に高い内容だ。

「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」の感想。
これは、私もサリンジャー作品を読みたくなる。作家を目指す主人公のジョアンナは、出版エージェントへの就職が決まったが、任された主な仕事は、社長の助手としてテープお越しと担当作家へのファンレターの返信代筆。その担当作家というのがJ・D・サリンジャーだった。社長のマーガレット、サリンジャー、サリンジャーのファン。多くの人たちの出会いが、ジョアンナを一人の人間として自立させていく。私も、正直、ジョアンナと同じようにサリンジャーの作品を読んだことがない。出版業界版「プラダを着た悪魔」と言えなくもないけど、1人の女性の成長を繊細に描きつつ、作中の端々から人は何故サリンジャーに惹かれるのかという思いが見え隠れしていた。

「シン・ウルトラマン」の感想。
正直、これは私が生まれて初めて、惰性ではなくちゃんと意識して見た最初のウルトラマンである。怪獣が何故に日本にだけ現れるのか。何故ウルトラマンは人類のために戦うのか。それらを「シン・ゴジラ」の時と同じようにセリフでどんどん繋いでいき(私はコレを“シン・ゴジラ・メソッド”と勝手に呼んでいる)、スピード感ある展開で物語が進んでいく。あえて言うなら、TVシリーズの4話分を1本に上手く繋いだようなテンポの良さ。今、改めてウルトラマンを描く上で必要なものは全てぶち込んだ。めちゃくちゃ情報量が多いのに、ウルトラマン初心者の私でも物語がスッと入っていく。見終わった後、ウルトラマンとは何であるか、何となく判った気になれた。
冒頭で、ウルトラマンが登場する以前に人類が(というか日本人が)禍威獣と如何に戦ったかをザックリと説明されるのも面白い。いかなる禍威獣が現れようと、ウルトラマンがピンチに陥ろうと、人類にはそれを解決できるだけの知恵と勇気がある。“アレ”の戦いは、まさに人類の叡智とウルトラマンが人類の可能性を信じた(あるいは理解した)奇跡だ。根っからの「ウルトラマン」ファンが「シン・ウルトラマン」をどう思ったか判らないが、ウルトラマンとはこういうものとしっかり提示しつつ、現代的なリアリティで再構築されたバランス感覚に優れた特撮怪獣映画であった。あと、エヴァンゲリオンがウルトラマンと言われる理由も理解した。

「シング・ア・ソング!」の感想。
夫を戦地へ送り、その度に所属する軍からの電話や呼び鈴に怯える。気晴らしでもして、気丈に振る舞っていなければ、英国軍人の妻などやってられない。そんな軍人の妻たちが突然合唱団を結成する。息子を戦地で失う心の傷が癒えないケイトは、気丈に軍人の妻合唱団のリーダーとして振る舞うも、外様のような、その悲しいほどのから回りっぷりがむしろ痛々しい。もう一人のまとめ役であるサラは、合唱団メンバーとして楽器(電子ピアノ)を弾き、作詞もやり、周りの奥さんたちと上手くやっていく一方で、ケイトのやり方に不満がありぶつかる。結局、サラを中心に合唱団は、上手く回っていくのだが、対するケイトは心の傷を通販で埋めていくことが止められず、息子の車の処分も出来ない。ただ夫の無事な帰りを心配して待っているだけの人生を歌が変えてくれる。そう信じて、悲しみを乗り越え、失敗を糧にし、前に進む合唱団が迎える晴れ舞台。全てから解き放たれた歌声に心が洗われる。

「トップガン マーヴェリック」の感想。
30数年の時を経ての続編。みんな大好きな「トップガン」の名OPを名曲と共に現行機を使って再現した冒頭シーンで、もう完全に掴みはOK。全てにおいて進化した空戦(ドッグファイト)。こういう言い方アレだけど、映画で見る「エースコンバット」のような没入感ある空戦に酔いしれた。そして、マーヴェリックの亡きグースへの思いを感じとれた。不可能を可能にする男マーヴェリックが、今度は若きトップガンたちを更にもう一段上の高みへと飛び立たせる。そこには、グースの息子ブラッドリー“ルースター”ブラッドショーがいた。彼のマーヴェリックに対する軋轢は根深い。ルースターは、空戦において弱点がある。自分の殻を破らなければミッション達成は出来ない。ルースターの成長と関係修復が、最後に奇跡のドラマと最高のサプライズを生む。36年前に果たせなかったラストシーン。全ては、このためにあったと思ったら胸が熱くなった。

「帰らない日曜日」の感想。
メイドと貴族の身分差恋愛。限られた時間の尊い愛とエロス。その1日は、1人の女性の人生を如何に変えたのか。ニヴン家のメイドをしているジェーンとシェリンガム家の1人息子ポールは、身分を超えた交際をしている。2人はポールの家で自宅デートをするのが、彼にはエマというホプディ家の娘との婚約が決まっていた。つまり、ジェーンとポールは、愛し合っているがいずれ別れる割り切った関係なのだ。そのエマも、実はニヴン家の長男ジェームズと恋愛関係だったが、そのジェームズを戦争で亡くしてしまっていた。ポールとエマの結婚を前に3家族が昼食会を開くも、肝心のポールが来ない上に、それぞれの家族が失ったものの傷を負っているので、もうお通夜のような雰囲気。そんなこと知ってか知らずかイチャイチャしてるジェーンとポールだけど、家に誰もいないのをいいことにほとんど全裸で過ごしていた。コレが、実にエロい。セックスをしててもジェーンを妊娠させないように気を遣ってるのが、ポールの見た目のチャラさとは反対に真面目なところ。ジェーンもそれとなく気付く辺りに、他のラブシーンにない感情を感じた。
プロフィール

藤堂志摩子

Author:藤堂志摩子
初めまして。私は、仮想世界の女子校に通う“エターナルセブンティーン”藤堂志摩子といいます。乃梨子の「阪神タイガースを生暖かい目で見守る志摩子さまが好きだ!」という微妙なリクエストで生まれた新しい形のバーチャルネット白薔薇さまです。どうかよろしくお願いします。
メールフォームを利用したい方は、こちらをクリック。

メールフォーム

Creative Commons License
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示-非営利-継承 2.1

最近の記事
月別アーカイブ
ブログ内検索
カテゴリー
リンク
RSSフィード