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HP(ヒットポイント)の新解釈だけじゃない『ウィザードリィ』における〈ベニー松山理論〉とは


 このツイートを切っ掛けに改めて注目された、ゲームライター兼小説家のベニー松山さんによる『ウィザードリィ』の独自解釈。以前、私は、このブログを開設する前に作っていた日記サイトで、この件について触れたことがあります。
 この攻略本が、他の攻略本を何処が違うのか? それはゲームシステムを解説する際に、『ウィザードリィ』の世界観の中で整合性が付くように独自の解釈と理論を含めて説明したことです。何故転職(クラスチェンジ)するとレベルが1になるのか? 何故6人パーティなのか? レベルと経験値、HP(ヒットポイント)の概念とは? なぜモンスターを倒すと宝箱が出てくるのか? なぜ先制攻撃で呪文が使えないのか? 『ウィザードリィ』における魔法の概念などなど、ゲームシステムを世界設定とリンクさせて解説した攻略本はかつて無かったのです。しかもこれらは、元々『ウィザードリィ』にそういう設定があったわけではなく、ほぼベニー松山さんがでっちあげた想像の設定だということ。それが『ウィザードリィ』の特にコンシューマ派の人にとって、公式設定であるかのように浸透してるからすごいです。特に「HP=体力」という常識を覆した、いわゆるベニ松理論は秀逸でした。

 ツイートの元になった『ウィザードリィのすべて』は、攻略本としての機能と同時に、想像力が大事な『ウィザードリィ』において、それを補助する設定サブテキストでもありました。
 では、具体的にベニー松山さんは、『ウィザードリィ』の各種設定をどのように解釈したのでしょうか? 正直、『ウィザードリィのすべて』を古本屋で探し、買って読んでいただくのがありがたいのですが、現状なかなか困難です(プレミアム価格を付けられてる場合もあります)。そこで今回は、その内容を一部ざっくりと紹介します。
その1:人の5種族は、なぜ同じ都市で暮らしているのか?
 人の5種族とは、人間(ヒューマン)、ドワーフ、エルフ、ノーム、ホビットのことです。これらの種族は、それぞれ寿命が異なっています。不老不死のエルフ。400歳前後のノーム。200歳前後のドワーフ。100歳前後のホビット。古代は、種族の寿命差によって、お互い干渉することなく、独自の集落を持ちの生活していました。しかし、世代を重ねるごとに寿命は縮まっていき、ほぼ人間と変わらない最長100歳ほどになっていきました。このことが、互いの種族の文化交流を深め、文明を発展させていったと言われています。また、寿命が短くなったことによって、特にエルフは、人間と同じような欲望を持つようになったそうです。

その2:僧侶の治療呪文は、病気を治せないの?
 僧侶の呪文は、裂傷、打撲、火傷、凍傷、骨折、あるいは手足の切断のような欠損すらも一瞬で完治できます。また、外的要因による中毒症状は、血液中の毒素を中和する解毒の呪文で治します。これを応用すれば、お酒を飲んだあとの二日酔いも治せます。ただし、長期的な病に関しては、治療魔法を確立できていません。そのため、僧侶は、呪文以外に薬草学にも通じています。

その3:どうして戦死した者を蘇生できるの?
 『ウィザードリィ』の世界においても死は絶対です。ただし、これが老衰ではなく、外傷による死であるなら、蘇生の可能性が残されています。では、なぜ死者の蘇生ができるのか? 1つの理由は、エルフやノームなどから長寿が失われ、バランスを保つための超常的な働きが蘇生という形になったのです。
 迷宮で死亡した冒険者は、カント寺院にて防腐処理がされ、しかるべき蘇生措置がなされます。蘇生は、僧侶の蘇生呪文によって行われますが、100パーセントではなく失敗の可能性もあります。失敗すると肉体は灰に分解されます。これは、肉体が復活のエネルギーによって燃え尽きてしまったからです。灰になった状態からの蘇生は、僧侶呪文の最高位〈カドルト〉か、神の奇跡と言われる〈マハマン〉を唱える以外ありません。それでも失敗してしまった肉体は、魂の消失、つまり完全なる死を迎えます。また、肉体の腐敗が進んでしまうと魂も消失してしまいます。迷宮に置き去りにされた死体がロストしてしまうのはそのせいです。

その4:魔法に使用回数があるのはなぜ?
 魔術師系と僧侶系の大きく2つの系統に分かれる魔法は、精神の集中と詠唱によって自然の状態に変化を与えます。分子を激しく運動させることで高熱を生み出す〈ハリト〉。運動エネルギーを極端に低下させることで低音状態を作る〈マダルト〉。肉体の傷を治療する〈ディオス〉。すなわち魔法とは、自然界にあるエネルギーを操る法なのです。
 魔法は、深い精神集中を必要とします。その精神領域は、7レベルまでの段階に分類されます。精神集中には限度があり、決められた回数があります。この回数をMP(マジックポイント)と呼んでいます。最大は9回。これが、術者が精神集中できる限界ということです。精神領域は、各レベルで独立しています。その為、最高位の魔法の使用回数を使い切っても、下位魔法に余裕があれば唱えることができます。魔法の使用回数は、HPの上昇の理屈と同じように、経験を重ねレベルが上がると習熟度も上がり、術者の精神領域にかかる負担が呪文一つ当たりに対して減るので回数が増えるのです。
 魔法の使用回数は、十分な休養と睡眠さえとれば回復します。迷宮の中でも休息は取れますが、常に周囲の敵を警戒しながらの休息と敵のいない宿での睡眠では、疲労の回復度が違います。

その5:転職後にレベルが1に戻ってしまい、年齢が5歳増えてしまうのだけど?
 前の職業でどんなに鍛えても、新しい職業では全く違う筋力や精神力を必要とします。急激な変化は、実践の勘を狂わせてしまうのです。また、クラスチェンジは、外の世界と異なるな時間進行に支配された力場の中(トレーニングフィールド)で訓練をします。実時間では1日ほどですが、転職訓練を受けた者は5歳ほど歳をとってしまいます。

その6:異様に高い特性値のボーナスポイントを得ているキャラがいる件
 種族ごとの基本特性値にプラスして、職業を得る人はボーナスポイントが与えられます。ボーナスポイントは、先天的な能力の値であり、これは生まれ持った才能の数値化です。ただし、努力によって初期の特性値を伸ばすことが出来ます。これを後天的能力と言います。ただし特性値は、最大18です。それが、人類の限界ということです。

その7:レベルと経験値の概念について
 レベルを上げるとは、“場数を踏む”ということ。経験値とは、“修羅場をくぐる”ということです。迷宮に挑む冒険者は、常に命がけで、ある種のプレッシャー、死の恐怖感を味わいます。それらから逃げずに勝利することで得られるもの。プレッシャーを乗り越えた達成感。死の恐怖を克服した自信と満足感。これが、“修羅場をくぐる”ということであり、プレッシャーに応じた経験値を得ることなのです。
 この場数の区切りが“レベル”です。そして、レベルの上昇による必要経験値の増加は、経験による恐怖心やプレッシャーの低下から、相対的に多くの経験を必要とするからです。

その8:どうして迷宮内は6人パーティなのか?
 迷宮の規模と通路の広さは、ワードナの迷宮とル・ケブレスの山で概ね共通しています。1ブロックの長さは、およそ10メートル。迷宮を支える壁の幅を差し引くと通路は、およそ6メートルになります。両手を広げた大人なら3人並ぶのがやっとの広さです。前衛が互いに攻撃しやすく、後衛への攻撃を妨げる。逆に後衛の攻撃が、前衛を巻き込まない。このベストな戦闘形態が、前衛3人、後衛3人の6人パーティなのです。

 いかがだったでしょうか? 『ウィザードリィ』は、ある意味でイマジネーションのゲームです。プレイヤーの数(*20)だけキャラクターがいて、設定があって、物語があります。それをより膨らますための手助けが、『ウィザードリィのすべて』なのです。
 最後に、これも以前日記に書いたことなのですが、ベニー松山さんが『ウィザードリィのすべて』に賭けた思いを、同書の著者あとがきから引用します。
 初めてウィザードリィ(AppleII 版)に触れた7年前と言えば、ファミコンはおろかパソコンにおいてさえRPGが存在しない時代であった。いや、多少はあったのだろうが、それをRPGと呼んでいいのかどうか難しいものであったことは否めないだろう。
 それだけに、僕がウィザードリィというRPGに受けた衝撃は相当なものであった。シンプルな3次元迷路で繰り返される粗いグラフィックで描かれたモンスターとの戦闘が、これほどまでにプレイヤーの心を魅了してしまうとは!
 それ以来僕は、いつかこの迷宮世界を一冊の本にまとめたいと思い続けてきた。単なるデータの羅列ではなく、独立した読み物として想像をかきたてることができる本を。そうでなければゲームを攻略する手助けにはなっても、ウィザードリィの世界を楽しむ手助けにはならないからである。
 そうした思いを込めて書き上げたのが、この『ウィザードリィのすべて』である。友の会パートを除くほとんどを、ほぼ一人で書くことになってしまった。
 この本が僕の望む通りの一冊になっているかどうかは読者の皆さんの判断に委ねることになるが、僕としてはできる限りそういった内容に近づけたつもりである。7年前に僕がウィザードリィから受けた衝撃を、少しでも感じ取ってもらうことができれば幸いである。

ベニー松山著『ウィザードリィのすべて』より


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